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これを読めば鎌倉の漁業が分かる!漁船「隆翔丸」のワカメ漁に密着して、鎌倉の漁業について聞いてきた

6月も中旬に差し掛かり、7月の海開きまでもうすぐ!
 
鎌倉の海水浴場といえば由比ヶ浜海岸、そして間に流れる滑川を挟んでその隣の材木座海岸!
 
そんな材木座海岸で漁が行われているのをご存知でしょうか?
 
材木座海岸
 
ここ材木座海岸に構える漁船「隆翔丸」のフィッシャーマン・中込和行さんは一見、シャイなように見えるが鎌倉の漁業に対してとても熱い思いを持っている男。
 
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自分が取材の依頼を行ったときに、中込さんは一言こう言った。
 
「鎌倉の漁業についてのインタビューであれば良いですよ。あまり自分の宣伝みたいな感じにはして欲しくなくて。」
 
今回はそんな鎌倉の漁業に対して熱い思いを持っている隆翔丸・中込さんのワカメ漁に密着した。
 










 
密着ワカメ漁24時!
 
フィッシャーマンの朝は早く、朝6時前から始まる。
 
朝6時の材木座海岸
 
そして6時からワカメの刈取りに出港!
 
浜小屋の前に置いている船を・・・・
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どりゃーっっ
 
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となんと船を後ろから自力で押し出しているのです。
 
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ここ材木座海岸には漁船を係留しておく場所が無いため、毎回漁に出るたびに船を手動で引っ張って出しているとのこと(!)
 
隆翔丸の乗組員としては、中込さん1人。※今回は特別に同乗させていただいた。
 
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約10分ほどで漁場に到着し、ワカメの刈り取り作業の開始します。
 
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養殖縄に巻きつけられたワカメは、11月の終わり頃に種付けが行われてから水深約2〜3mのところで光をたっぷり浴びて育てられる。
 
そんなじっくり育てたワカメの茎が巻きつけられたロープを、前屈みで手元まで引っ張ります。
 
手元まで引っ張って、元茎部から原藻を鎌で刈り取る!
 
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収穫量はおおよそ養殖縄1m当たり10~20kgとなる。
 
ある程度刈り取ったらロープを引張って船を移動させ、基本的にはこれらの前屈み作業とロープの引張り作業が繰り返し行われます。
 
このような作業なので、天候が悪かったり、波が荒いときには船を出せないとのこと。
 
船に載せられる分だけワカメを刈り取ったら、チーム隆翔丸の皆さんが待ち構えている材木座海岸まで戻ります。
 
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陸に戻った後は、チーム隆翔丸の皆さんで収穫したワカメの下処理を行います。
 
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下処理を行った後、ワカメをボイル→洗浄し、最後に天日干しにします。
 
天日干し
 
天日干し2
 
なんと!ワカメを天日干ししてから、
 
 
出荷状態のわかめ
 
この出荷する状態にするまでに2〜3日ほど干すとのことだ。
 
そして天日干しの作業を行っている間、鎌倉の漁業について聞くことができた。
 
漁船「隆翔丸」のはじまり
 
鎌倉新聞
今日は朝から密着させていただいてありがとうございます〜!
 
さっそくですが、まずは漁船「隆翔丸」のことをお伺いできますか。
 
中込さん
親父が隆行(たかゆき)って名前なんだけど、それで「隆翔丸」という名前を付けたんです。
 
親父はもともと漁師だったわけじゃなくて、50半ばくらいじゃないかな、始めたの。
 
50半ばまでバスの運転手をやってたんですが、釣りが好きでそのうち漁師さんの手伝いをするようになったみたいで。
 
最初は逗子の方に手伝いに行ってたんだけど、鎌倉に住んでたということもあってこっち(材木座)で漁を始めて。
 
最初は俺も全然、手伝いもせず、見にも来ず、どういうことやってるか全く知らなくて。
 
自分は料理人を15年くらいやってたんですが、毎日終電帰りだったんです。
 
結婚した後に子供ができて、いつまでも終電帰りの生活は嫌だねっていうのを妻と言ってて。
 
最初は親父が元気だったから、親父が釣ってきたもので店でも開きたいな、っていう軽い考えで、手伝うよって言っただけなんです。
 
でもいつの間にか後を継ぐって勝手に受け取られて(笑)
 
物事がどんどん進んで、いつの間にやら組合員(鎌倉漁業協同組合:以下、漁協)になり、親父と5年くらい一緒に漁をしてました。
 
鎌倉新聞
お父さんは鎌倉市から漁業の後継者育成に寄与したことで表彰されてますよね。(リンク先の広報最終ページ)
 
中込さん
ただその親父も一昨年亡くなってしまったんです。幸いなことに一通りのことはやってたから、なんとか漁をできてるくらいでまだまだ漁師としては全然(浅い)。
 
鎌倉新聞
では漁師歴としては7、8年くらいですか?
 
中込さん
そうですね。
 
鎌倉新聞
「隆翔丸」の屋号としては親父さんの代から数えると15年前くらい?
 
中込さん
そうかな。72歳で亡くなっちゃったから、15年くらいかな。
 
隆翔丸
 
フィッシャーマンが料理人に変わる時、その名は「鎌倉フィッシャーマンズキッチン」
 
鎌倉新聞
ここで鎌倉の漁業に関して聞かせてください。
 
中込さんは鎌倉漁業協同組合(以下、漁協)の理事でもありますよね。まず、漁協ってよく分かっていないのですが具体的にはどういった役割を持っているんでしょうか・・・?
 
中込さん
漁師の人たちの共同の組合だから、漁師の人たちが仕事をできるような環境の管理・整備などを行っています。
 
あとは市民の皆さんに魚を供給する役目も担ってると思うんだけど、うちの組合は事務員の人が一人しかいないため、販売を伸ばしたりすることに関しては漁師の人たちが行ってる感じかな。
 
鎌倉新聞
ビジネス上のしきたりみたいな、世間で言われているところの農協みたいにそこを通さなきゃいけないみたいなのはない?
 
中込さん
そういうしきたりのようなことは特にないですね。
 
鎌倉新聞
良い意味で緩いですね〜。
 
鎌倉の漁業のそもそもの話ですが、由比ガ浜海岸から続く坂ノ下海岸であるとか、特に材木座海岸なんかは海水浴のイメージが強いので漁が行われてることが意外と知られてないですよね。
 
基本的に、昔から住んでいらっしゃる方は知ってるけど、鎌倉とかに魅力を感じて最近移住して来た方は結構知らない方が多いんじゃないかという印象があります。
 
中込さん
鎌倉には現状では獲った魚をすぐ加工する場所や、すぐに売ることができる場所がないということもあってなかなか鎌倉で漁をしてるよ、というのが分かりづらいかもしれません。
 
そこで自分は料理人をやっていたので、自分で料理して食べてもらえるお店は持っていないけれど食べてもらえる場を作れるかなと思って作ったのが「鎌倉フィッシャーマンズキッチン」なんです。
 
地元の人や移住してきた人に「鎌倉でも漁をやってますよ」って知ってもらって食べてもらいたいからね
 
鎌倉新聞
実際にどこで食べられたり、獲れた魚を買えたりするんですか?
 
中込さん
スポットだと「鎌倉ビーチフェスタ」などのお祭りの時や、毎年春(3月頃)秋(9月頃)に大船駅のルミネウィングで行われている「鎌倉マルシェ」の時。定期的には毎月第1日曜日の鎌倉漁業協同組合の朝市です。
 
鎌倉新聞
長谷の鎌倉パークホテルで開催しているやつですね。
 
中込さん
あとあまり知られてないんですが・・・
 
鎌倉新聞
えっなになに
 
中込さん
鎌倉漁業協同組合でも鎌倉の海で採れた魚や貝、ワカメが直接買えるんです。もちろん、そのときに在庫があるものに限られるのと、在庫が無い場合には注文になるけど。
 
鎌倉新聞
えっそうなんですか!?!?!?
 
中込さん
場所が奥まったところにあるから、そんなところで売ってるっていうのが分かりづらくて知られていないみたいで(笑)
 
鎌倉新聞
坂ノ下のところですよね。
 
インターネットそれなりに使いこなしてる自分ですら、検索してなんとか場所が分かりました(笑)
 
中込さん
みなさんワカメ漁を手伝いに来てくれる方々も、手伝っていただくだけでなくてワカメも買ってくれるんですよ。
 
逆に欲しいから手伝っていただけるという慣習も昔からあるみたいで。
 
たくさん穫れればもちろん漁協の方でスーパーに卸したりとか。
 
鎌倉新聞
スーパーで売ってるやつよく見ます!「鎌倉特産 湯がきわかめ」っていうブランドですよね。
 
鎌倉フィッシャーマンズキッチン
 
鎌倉フィッシャーマンズキッチン1
 
鎌倉フィッシャーマンズキッチン2
 
鎌倉の漁業はサーフィンなど海のレクレーション利用者と共存する珍しい海
 
鎌倉新聞
あともう一点鎌倉の漁業でお伺いしたいのが、特にここ材木座海岸はウィンドサーフィンとかいわゆる海のレクリエーションの人たちと漁業の人が共存する、珍しい海ですよね。
 
中込さん
そうだね。自分もウィンドサーフィンとSUPは漁師より長くやってる。
 
鎌倉新聞
サーフィン歴の方が長い!
 
今日は漁師さんの観点でお話を伺いたいんですが(笑)、共存している中で気をつけていることってありますか?
 
中込さん
強いて言えばだけど、サーフィンしてる人の合間を縫って出たり入ったりする必要があるから事故が無いように気をつけているけど。
 
サーファーの人にも色々いて、昔からここ(材木座海岸)でやっている人たちはすぐ分かってくれて船を避けてくれるんだけど、
 
初めて来られる方とかは漁をやっているということをそもそも知らないケースが多い。
 
そうなると、こっちから大声出してぶつからないように言わなきゃいけない場合もある。
 
幸いなことに接触事故みたいなことは先輩方の時代も含め、今まで無かったから問題にはならなかったけどね。
 
漁師の観点で言うと、波の中では船はおもうように動かないので、お互い気をつけて楽しみたいな、と。
 
ウィンドサーフィンとSUPをやっているからお互いの気持ちが分かるし、本当に上手く共存していきたいと思ってます。
 
あと海水浴場シーズンは、材木座海岸は船を置いている浜小屋の付近や漁を行っている区域は一応遊泳禁止で、幸いなことにスムーズに漁ができている。
 
ただ坂ノ下は船が並んでるところが海水浴エリアだからね。海水浴客の人たちを避けたりしながら行かなきゃいけないみたいです。
 
鎌倉新聞
そうなると海水浴客の人たちが来る時間帯を避けて漁に行く必要がありますね。
 
中込さん
そうだね、そこも上手く共存してやっているって聞いてる。早朝に漁に出て、海水浴時間前に船を浜に上げるとかね。
 
海レクと共存
 
鎌倉新聞
あと、海岸の上に浜小屋を立ててそこに船を置いているだけということは大きな台風が来たり、時化(シケ)が来たりすると被害を受けやすいですよね・・・?
 
中込さん
そうだね、材木座海岸は船の出し入れは大変なんだけど、浜がちょっと長い。だから、坂ノ下海岸と比べると時化は強い。一方、坂ノ下海岸は海までの距離が短いから出し入れ楽なんだけど、時化がくると被害が大きいみたい。
 
台風でいえば昨年(2017年)の10月にも大型の台風(21号)が来ましたね。
 
鎌倉新聞
浜小屋が壊滅的な被害を受けたと伺っているのですが、全壊してしまった?
 
中込さん
全壊の浜小屋もいたし、うち(隆翔丸)の浜小屋も砂が全部持ってかれて、目の前が崖みたいになっちゃって。
 
浜小屋の前に設置してある太い柱が2本ぶち折れて、小屋の中まで水が入ってきた。
 
それは実際、神奈川県のニュースにも出て。その時はいくつかTVも来たかな。
 
鎌倉新聞
今回はさすがにニュースにもなったんですね。
 
中込さん
ですね。
 
何よりも漁ができる状態じゃなかったのが損失が大きかったかな・・・。
 
船も持ってこれない状態だったので。ただ10日か2週間くらいで応急処置で船を上げるところだけは砂を盛ってもらいました。
 
でもそのほかの場所が砂がなくなったままの状態になっていて、最終的に復旧作業が完了したのが年が明けた2018年1月末だったんです。
 

台風後の浜小屋

台風後の浜小屋※中込さん撮影


 
伊勢海老は「鎌倉海老」って呼ばれてた!?!?
 
鎌倉新聞
鎌倉の漁業とその課題について教えていただいてありがとうございます。今日取材したワカメについてお伺いしたいのですが調べたら鎌倉や神奈川県もそうですけど、三陸や徳島県の鳴門あたりと比べると、収穫量は少ないですよね・・・?
 
中込さん
船の大きさや区画漁業権(養殖などを行うために決まっている場所)の大きさの影響はあると思う。
 
もちろん漁をする人が増えて申請すればもっと増やすことは可能かもしれないけど。
 
昔は結局、冬〜春の時期って魚があまり獲れないから、安定収入を求めてワカメ漁を始めたらしいんだけど、海水温の温暖化で漁獲量が安定するはずのワカメ漁が全然安定しなくなっちゃったから、最初の元手もかかるんだけど、そういうのをかけてまでやろうって人がいなくなっちゃったのもありますね。
 
鎌倉新聞
ワカメ漁が始まった背景はそこなんですね・・・!
 
冬〜春はワカメ漁が目立ちますが、一年を通してどういった魚介類が獲れますか??
 
中込さん
春はサザエ、ワカメ、アカモク、ヒジキなどの海藻類、夏はマダコ、カマス、舌平目など、秋はカワハギ、カマス、ボラなど、冬はヒラメ、ナマコ、アワビ、メバル、カサゴなどが獲れますね。
 
鎌倉新聞
そんなに豊富だったんですね・・・!
 
タコ
 
中込さん
ちなみに伊勢海老も昔は鎌倉時代とかはこの辺でたくさん獲れてたから、本当は鎌倉海老って呼ばれてたんだけど。
 
鎌倉新聞
えっまじっすか!?!?!?
 
中込さん
そう。だけど、いつの間にやら伊勢の方が有名になって伊勢海老っていう名前に変わっちゃった。
 
鎌倉新聞フォトグラファー
この前長谷の居酒屋に行ったら、大将がお客さんに叱られてました。「伊勢海老って書くなよ。鎌倉海老って書けよ」って(笑)
 
確かに、ああいう形の海老は伊勢海老として通ってる。
 
中込さん
定着しちゃってるんだよね。
 
鎌倉新聞
だから伊勢海老って書かないとわかってもらえないか。
 
中込さん
ご年配の方は分かるんだよね、鎌倉海老って書いてもさ。
 
自分たちくらいの年代になってくると鎌倉海老って「どんな新種の海老だ!?」ってなるっていうね(笑)
 
鎌倉海老
 
ワカメの美味しい食べ方
 
鎌倉新聞
そろそろお時間の方も迫ってきたんですが、最後に!ワカメの美味しい食べ方ってありますか??
 
中込さん
そうだね、サラダに入れると子どもも食べられるし、いいんじゃないかなと。あとはやっぱり味噌汁。
 
鎌倉新聞
サラダだと、ワカメそのままの味や食感が伝わりやすいですもんね。
 
中込さん
あとは一度試してほしいのが生の、茶色の状態の獲ってきたばかりのワカメをしゃぶしゃぶにして食べると美味しいよね。
 
さっと湯がくと鮮やかな緑色になります。
 
めかぶ
※編集部注:獲ったばかりのめかぶ(左)とお湯をくぐらせためかぶ(右)
 











取材後に初めて獲れたてのめかぶ・ワカメを食べたのだが、本当に新鮮で美味しい。
 
鎌倉の海では有名なしらすだけでなく、ワカメやサザエ・マダコをはじめとして四季を通して様々な魚介類が獲れる豊かな海だと初めて知った。
 
そして中込さん含めた鎌倉のフィッシャーマン達は、必要以上に天候の影響を受ける中、地産地消に繋がればと鎌倉フィッシャーマンズキッチンとしても漁の合間を縫って活動している。
 
まずは鎌倉パークホテルで行われている毎月第1日曜日の鎌倉漁業協同組合の朝市に行ってみたいと思う。
 
鎌倉漁協の朝市
開催日時:
4月から12月の第一日曜日(10月は「魚まつり」として盛大に行われます。)
午前10時から(売切れ次第終了荒天・不漁は中止)
場所:鎌倉パークホテル駐車場
鎌倉漁協ブログ:http://sea.ap.teacup.com/jf-kamakura/
 
中込さん

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